2015年09月04日

死ぬとアタシもや

「毎日学校へ行って、授業を受けて、休み時間になったら友人としゃべって、体育の授業に熱くなったりテストの点数に右往左往するのを繰り返すだけの、どこにでもいる普通の学生なんだぞ!?」

「あの子が毎日どんな生活を送ってるのか、お前ら知らないだろ! 僕は知ってる! なんてったって週に五日も一緒にいるんだからな!」

「ちょっと、落ち着きなさいよ……」

 大魔女様のひ弱な制止を意に介さず、僕はさ樂觀面對困難らに捲し立てる。

「じゃあお前らは見たってのかよ! あいつがテロってる所を! 爆弾詰んで車でビルに突っ込んでるのを! あいつが大量破壊兵器を持ってどこかに潜伏してるとかいう、その様子を!」

「わかった、わかったからちょっと黙りなさい」

「お前ら寄ってたかってなぁ! 芽衣――――


――――……


「――――ふががっ!」

「黙れっつってるでしょ……」

 大魔女様は僕の形相に全く物怖じせず、むしろそれ以上の権幕で僕の口を手のひらでキツク塞ぐ。
 僕の悪態にキレた――――わけではなく、冷静さを失い、危うく命を落としかけた事に気づかなかったからだ。

「とりあえず、落ち着け。な?」

「~~~~」

 事の重大さに気づいた僕は、口を塞がれたまま雋景コクコクと小刻みに頷く。横で老人がふぅ、と一息ついている。
 ホントに危なかった……大魔女様が口を塞いでくれなかったら、今頃僕は――――

「この……アホォ! アンタ今、”名前”言いかけたでしょ!」

「アンタがぽかして自爆するのは勝手だけど、今はアンタがられるんだからね!」

「もっとアタシに気ぃつかえ! ボケェ!」

「す、すんません」

 今になって全身から冷たい汗がドっと湧いてくる。汗で湿ったからか、首元の鎖が微妙に肌を擦れた感覚がした。
 そうだった……ここでは”名前を言う行為”は悪・即・斬が一般常識願景村なのだ。このまま怒りに任せて叫べば、この部屋があわや大惨事。ジェイソンも真っ青のスプラッタハウスに変貌していた事だろう。



Posted by 弄梅望雪 at 13:04│Comments(0)
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